2017-10-15 谷川俊太郎「もし言葉が」 書き写し 『谷川俊太郎詩選集 1』(集英社文庫、2005年)pp. 106-107より。 もし言葉が 黙っていた方がいいのだ もし言葉が 一つの小石の沈黙を 忘れている位なら その沈黙の 友情と敵意とを 慣れた舌で ごたまぜにする位なら 黙っていた方がいいのだ 一つの言葉の中に 戦いを見ぬ位なら 祭とそして 死を聞かぬ位なら 黙っていた方がいいのだ もし言葉が 言葉を超えたものに 自らを捧げぬ位なら 常により深い静けさのために 歌おうとせぬ位なら